『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

分かる事柄、分かることば、そして意欲!

今日は柔らかい日差しが気持ち良いですね。草木も一斉に新芽を出し始め、たくさんのエネルギーを感じます。

 

昨日はろう学校の卒園式。赤ちゃんの時に来室した子ども達が立派なお兄さん、お姉さんになった姿に感激しました。

 

さて、今日は前回の発達に引き続き、ピラミッドの一番上の<ことば>についてのお話をします。お子さんのことばの相談でいらっしゃる親御さんの主訴で一番多いのは、ことばが出てこないこと。全体発達の一部であることばの発達。ことばを表出するまでになるには、どんな力がお子さんの中に育つ必要があるのでしょう。

 

まず、分かる事柄がたくさんその子の中に貯まっていく必要があります。帽子を渡すと頭にかぶってみる。コップを渡すと飲もうとする。靴を見せると履こうとする。歯ブラシを渡すと口に加えてみる。その分かる事柄がベースとなり、理解できることばが育ちます。「ジュースを飲もう」と伝えると、コップを持ってくる。「お出かけするよ。靴を履こうね。」と伝えると、玄関に行って靴を探そうとする。「帽子をかぶって」と伝えると、帽子をかぶろうとする。ことばが表出できるようになるまでに、理解できることばがたくさんその子の中に貯まっていく必要があります。

 

私たちはとかく表面に現れたことについてのみ評価してしまいますが、その下に埋まっているものを大事にみていく必要があります。

 

ことばは全体発達の一部。前回お話したように、ことばの育ちは、身体の育ち、心の育ち、知力の育ちがベースとなります。大好きなママに伝えたい。大好きなパパに伝えたい。大好きな人と気持ちを共感し合いたい、分かってもらいたい、という<心>がお子さんの中に育つことが大切。それが、コミュニケーションの意欲となるのです。

 

中東の料理、フムスを作ってみました。今まで、フムスは日本では作れないなぁ、と思っていたのですが、試しに市販のひよこ豆の缶詰と練り白ゴマで作ったところ、あら!すっごく美味しい!

ひよこ豆2缶、オリーブ油(大さじ3)、レモン汁(1個分)、練りゴマ(大さじ3)、にんにくペースト(大さじ1)、をミキサーにかけるだけ。塩、胡椒で味を整えて、出来上がり。ピタにつけていただきます。ベ・テアボン!

 

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ことばは全体発達の一部

  今日はとても良いお天気ですね!

  以前もこのブログで書いた覚えがあるのですが、大事なことなのでもう一度。

 皆さん「お子さんのことばが遅れていて心配」、とのことで相談にいらっしゃいます。ことばは全体発達の一部なので、ことばだけが遅れているということってないのです。

 ことばの発達はピラミッドの頂点にあたり、ことばの発達の土台をつくっているのが<身体の発達>。私たちは生まれた瞬間から重力と戦っています。寝返りを打てるようになり、お座りができ、立ち上がれる。これはすべて重力に逆らう力が育つから獲得できることになります。やっぱり身体が資本なのです。そのために大切な身体作り。よく食べて、よく寝ること。規則正しい生活をすること。規則正しい生活をすることで脳も覚醒します。身体の発達に合わせた充分な運動も大切。

 そして、その上に乗ってくるのが<心の発達>。ママが好き、パパが好き、という気持ちが育つこと。これはコミュニケーションの発達の基礎になります。

 その上に乗ってくるのは<知力>。見て考える力や手先の力。以前、ピアジェの「知性の誕生」という本を読んでみました。ピアジェの子ども達の生まれた時からの観察記録なのですが、内容は目と手の使い方でした!

 身体の発達、心の発達、知力の発達を土台とし、一番上にやっとことばの発達。

 

 なので、ことばの力を大きく育てたいのならば、その下の部分を大きく育てていくという視点も大事になってきます。ことばへのアプローチだけでなく、ことばの発達を支えている下の部分の発達にもアプローチしていく。大事なことです。

 

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うちの息子に構ってもらって、なんだか大喜びのうちのワンコ。

 

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声に引きずられないように

聞こえにくいお子さんと接している時に気をつけていること。自分に言い聞かせていること。それは、声に引きずられない、ということ。これは私たち聞こえる人間にとっては本当に難しいことです。聞こえる人間はどうしても声に引きずられてしまいがちです。

 

「おうちに帰るよ。お片づけをして。」という音声での話しかけに、お片づけをし始める聞こえにくいお子さん。一見すると音声での話しかけに反応し、理解し、行動しているように思えます。でも、本当にそうでしょうか?ことばでの理解ではなく、何となく状況判断で行動している可能性もあります。

 

 聞こえる集団に入っている聞こえにくいお子さん。先生は「他の子と変わりなく生活しています。」と言います。でも、本当にそうでしょうか?

 

 聞こえない・聞こえにくい子は目の子。上手に他の子の様子を見て同じように行動できてしまうので、一見するとうまくやっているように見えるかも知れません。でも、それが落とし穴。目で見て真似して行動する。それは映像のみであり、ことばできちんと理解して行動している訳ではありません。そんな状況がずっと続いてしまったら一体どういうことになるのでしょう。

 

 聞こえにくいという障害は目に見えない障害です。音声言語での聞き取りは常に曖昧であり、私たち聞こえる人間のように聞こえているわけではありません。雑音があるこの世界ではより一層聞き取りは難しいでしょう。

 

 聞こえない・聞こえにくい子が音声言語に反応したとしても、音声言語で言い表してくれたとしても、それに引きずられないように気をつける。きちんとアイコンタクトをして視覚的な補助などを使いながら話しかける。

 

 聞こえにくい子がお話ができるようになると、聞こえる人間はその子の聞こえにくさをついつい忘れてしまう。そういうことがないように。

 

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子どもって おもしろい!

 息子たちが小さかった時、一緒に国立博物館へ行きました。その時に「ダーウィンの進化論」の特別展が開催されていたのです。猿から人間への進化が分かりやすく説明されていました。それを見て帰って来て、息子が「お母さんって、前、猿だったんだよね。」と言いました。もう、笑っちゃって、笑っちゃって。私は小さい息子にとって、かなり多くの時間を生きている大人。その息子の時間の概念は、私とは違う。息子にとって私はダーウィンの猿と同じくらい大昔の人なんだな、と思いました。

 それから、パンダについてのテレビを見ていた時、小さかった息子が「お母さんがパンダだったら、嫌いなオスに噛み付くね」と言いました。「えっ?なんで?」と聞くと、「パンダは大人しく見えるけど、嫌いなパンダが近づいてくると、噛み付くんだって。」はぁ〜、私のこと良く観察してるな、と思いました。

 小さかった2番目の息子に「お母さんのこと好き?」と聞いたら、「うん、100パーセント!」なんて可愛らしい!

  子どもって本当におもしろい!

  

  ある5歳児のお子さんとのセラピーで大笑いすることがありました。そのお子さんは指差しの理解ができるようになってきました。指をさした方向を一緒に見る力ってコミュニケーション力にはすっごく大事なこと。私が机の下に落ちたビー玉を指差しすると、チラッと見てくれたような、見てくれないような。でも、全く拾おうとする気配がないので、きっと分からなかったんだな、と思っていると、あら?何か机の下で足がゴソゴソ動いている。見てみると、足でビー玉を拾っている!もう、大笑い!大爆笑! ちゃんと指差し理解できてる〜!ハナマルです。

 

 雛人形を飾りました。これは本当にアンティークで、私が生まれた時に祖父母に買ってもらったもの。私はひな祭りが行事の中で一番好き!

 

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聞こえない人は 目の人

 先週末はろう難聴教育研究会の研究会が開かれました。2日間の研究会だったのですが、その中で一緒に役員をされている筑波技術大学の井上先生のお話がありました。

 ろう難聴教育研究会を長年されている先生方は、皆さん熱心で優秀な方々ばかり。大変勉強になります。現在の会長は長谷川洋先生。以前はろう者の伊藤政雄先生が会長でした。

 井上先生は現在58歳。赤ちゃんの時に麻疹で失聴。4歳上のお兄さんも同時に麻疹にかかり失聴したとのことでした。

 ご両親は自己流で聞こえない子の子育てをされたようで、とにかく小さい時から文字を見せ、本に親しませ、口形を見せてのコミュニケーション。家中の全ての物に、その物の名前が書かれている札が貼られていたそうです。漫画本はルビが付いているので小さい頃はたくさん読んだ、とおっしゃっていました。家族の会話は筆談だったそうで、そのおかげで井上先生は助詞の間違いなどは小さい頃からなかったそうです。

 手話に出会ったのは博士号を取った時の祝賀会で、森壮也さんに会ったのがきっかけだったそう。手話に出会ってから、人生が豊かになった、という内容でした。

 井上先生の第一言語は書記日本語とのことでした。日本語の読み書きの力は大切ですね。そして、やっぱり聞こえない人は<目の人>だ、と講演会を聞きながら思いました。

 

 ラクレットのチーズが安く売られていたので購入。茹でたじゃがいもに熱々をかけていただきます。寒い冬の間の楽しみの一つです。

 

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プロセスを大事に

 発達の遅れがあり、目が合いにくい年長さんのお子さんの相談。ことばでの表出はまだなく、欲しいものがあると指差しで要求。大人しくて素直なお子さんなので家庭では困ったことがないとのこと。お母さんなのでお子さんの伝えたいことはよく分かる。

 例えばこんなお話がありました。家に帰って来ると必ず冷蔵庫の前に行き指差し。お母さんは大好きなウインナーを要求されているとすぐに分かります。お母さんは「ウインナーを食べたいの?」とその子の言いたいことを代弁。その子はお母さんに指差しで伝えると、テーブルについて出てくるのを待っている。ウインナーはいつも冷蔵庫に常備。気長に待てるお子さんなので、出てくるまでジッと待っていて、出てきたウインナーを食べる。家庭では困ったことがない。代弁もしているし、それ以上、どうすればいいのかよく分からない、とのこと。

 そのお母さんにお伝えしたことは、もし、余裕があったら、次回はウインナーをわざと常備せず、一緒に買いに行ってみたらどうかな?ということでした。お母さんはその提案に最初は「?」。いつもあると思っていたウインナーがなかったら、ビックリでしょうね。でも、そういうハッとする経験ってとっても大事です。なぜなら、心が動く経験だからです。

 いつも買っているウインナーの写真を撮っておき、写真カードを作る。その子が冷蔵庫を指差しして要求してきたら、冷蔵庫を開けて、一緒にウインナーを探す。「ウインナー ないね。」とウインナーの写真を見せて、「じゃぁ、一緒に買いに行こう。」スーパーの写真も作っておき、この時の買い物はウインナーだけにする。

 買い物に行く前、行く途中にウインナーの写真を見せる。「ウインナー買うんだよ。」ということばかけも一緒に。そして、スーパーに着いたら、スーパーの写真を見せ、マッチング。そしてウインナーの写真を見せ「ウインナーを探そうね。」と言いながら、たくさんの商品が並んでいるスーパーの中でウインナーを一緒に探してみる。ウインナーがあったらすかさず写真カードで再びマッチング。「ウインナーおんなじだね。買おうね。」とカゴに入れてレジに持って行く。家に帰ったら、そのウインナーを袋から出して一緒に茹でる。お皿に出して、「さあ、召し上がれ!」 食べ終わった後にもう一度ウインナーの写真を見せて、「ウインナー食べたね。」など振り返り。ウインナーの写真カードやスーパーの写真カードは、子どもの手の届くところにいつも置いておいてあげること。そんなことをお話ししました。

 

 一連のプロセスを見せること。それは「ウインナー」というイメージをたくさんその子の中に育みます。ウインナーはいつも冷蔵庫にあるものではなく、こんな風に買いに行くものという経験は、将来の自立のことを考えた時にとても大事なことでしょう。そして、繰り返すうちに、だんだんと色々なことがその子の中で結びついてゆき、その内、ウインナーを食べたい時、買いたい時、茹でたい時、食べた後などに写真カードをお母さんに見せにくるようになるかも知れません。写真カードがその子の中でことばとして使われるようになるのです。写真カードは本当に便利。そこになくても写真を使って何度でもコミュニケーションが取れるのですから。

 

 お母さんはその提案を聞き、こんな感想。「ウインナーが袋に入っている、ということもきっと知りません。スーパーで買うことももちろん知りません。茹でることも知らないし、お皿に出てきたウインナーが彼の中でのウインナーでした。やってみます!写真カードも作ってみます。」

どうだったかな?お母さんからの報告を聞くのが楽しみ!

 

うちのワンコ。耳を立てて何かを見てる!

 

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本物のことばを育むために

 以前こんなお子さんに会いました。お子さんは発達に遅れがあり、小さい頃から<言語訓練>に通っていました。お母さんは熱心な方で、お家でもその<言語訓練>を続けていたのだと思います。いつも使っている絵カードでは、「リンゴ どれ?」と言うとちゃ〜んとリンゴの絵カードを取ってくれます。でも、でも、本物のリンゴを見ても<リンゴ>を選べないのです。うわ〜っ、っと頭を抱えてしまいました。

 こんなお子さんもいました。目の前にあるたくさんの絵カードの中から「遠足」というカードを取ることができます。でも、でも、そのお子さんは本当の遠足に行ったことがない!うわ〜っ、っとこれまた頭を抱えてしまいました。

 

 ことばを育むイコール絵カードではありません。それはナンセンスで短絡的な考え方です。それは私たちの育ちを振り返ってみれば分かることでしょう。ことばが遅れているというと、絵カードで言語訓練!なんて発想になってしまいがちですが、ことばはそんなことで確実にその子の中に育まれることにはなりません。

 ことばは全体発達の一部です。その子の発達全体を見る必要もあります。身体の発達、心の発達、知的な面での発達、手先の発達を土台にし、ことばの発達があります。ことばだけが遅れている、ということはほとんどありません。そういう見方も大切になってきます。

  絵カードでは取れるけれど、本物では分からない。そんな子どもに育てないように、日々の生活の関わりの中でのコミュニケーションを大事にしていく。

 リンゴのイメージをその子の中にたくさん育てたいのなら、リンゴの絵本(リアルなリンゴの絵やリンゴの写真の絵本が良いです。)を見ながら「リンゴを買いに行こうね。」と一緒にスーパーに買い物に行く。スーパーにはたくさんの色のリンゴが売られています。「赤いリンゴだね。黄色いリンゴもあるよ。」など一緒に見ながら、話しかけをしながらリンゴを選ぶ。選んだリンゴを買い、家に戻り、さっきの絵本とマッチングする。そして、子どもの目の前でリンゴをむく。皮をむく時に長〜く連なるようにしてあげると子供はきっと大喜び。そして食べやすい大きさに切って、いただきます!食べながら、「美味しいね。甘いね。いい匂いだね。」などたくさんの話しかけができます。その子の中にどれだけリンゴのイメージを植え付けられるかが大事なポイント。イメージがことばの概念をつくるのですから。

 一回の経験だけでは無理です。繰り返し、繰り返しが大切。そして繰り返している内に、「リンゴを食べよう」という話しかけだけで、リンゴを冷蔵庫から選んで取り出してママに渡すことができるようになるでしょう。あるいは、スーパーのあの大きな空間の中のたくさんの刺激がある中で、「リンゴ」を選んで買うことができるようになるでしょう。あるいは見せてきた絵本のリンゴを見ながら食べる真似をしてくれるようになるでしょう。

 

 本物のことばを育むための手間と時間を惜しまないように。そしてこういう関わりは全ての子どもにとって大事なことです。

 

うちのニャンコ。寒いから布団をかぶって寝ています。

 

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