『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

嬉しいお便り

こんな嬉しいメールが届きました。

ハート&コミュニケーションに来ているAくん、年中さん。最近、場面にあった表現が少しずつ増えてきました。

庭にプラムの木が2本あるのですね。プラムが大好きなので5年前に植えてみました。植えたときはヒョロヒョロで、小さい苗木でした。2本別の種類があると、自然に受粉して実がなる、と聞いたので、狭い庭に2本を植えてみたのです。3年目になると桜の花のようなちょとピンクかかった花が咲くようになりました。4年目にはその花のあとに実がなるようになり、収穫できるようになりました。1本の木でたぶん300個くらいの実がなります。すっご〜く甘い。

実がなっている間は毎朝収穫して、採りたてを食べます。食べ切れないので、ジャムにしたり、果実酒にしたり、シロップにしたり、お裾分けをして食べてもらったりしています。

そのプラムの実を全部採らないで、今年はわざと残しておいたのですね。ハート&コミュニケーションに来る子ども達に収穫体験をしてもらおうと思って。ちょっと熟しすぎて柔らかくなってしまうことが心配でしたけれど、どうにかもちました。

 

さて、そのAくん。私がまず実を採る様子を見せました。

「プラム、エイって採るよ〜!」

採ったプラムをAくんに見せると、「トマト」と言っていました。赤くて小さいから、トマトに見えたのでしょうね。

「これ、プラムだよ。甘くて美味しいよ。」と伝えましたが、どうしても「トマト」。

さて、収穫したプラムを食べてみました。まずは食べるところを見せ、Aくんにも食べてもらう。こわごわ口にいれていましたが、気に入って食べてくれました。

 

その日の夜、次のようなメッセージがママから流れてきました。

 

<本日はありがとうございました。

「くみこせんせい、たのしかったね」「プラム、おいしかったね」と言っていました(A 本人からです)。

こうやって言うのは無論初めてですし、せっかくの療育での思い出をこうやって息子と語れるのが嬉しいです。>

 

やっぱり体験が大事ですね。

あんなにトマトと言っていたのに、ちゃ〜んとプラムって言えていて、プラムというイメージがたくさんAくんの中に入った、という証拠です。

 

以前、本末転倒の療育現場を見たことがあります。

子どもが並んだ絵カードから言われたカードを取る、ということをしていました。

「えんそく」と言われて、「えんそく」の絵カードをとっていたのですが、その子は実は一度も遠足に行ったことがない!とのこと。

 

ことばを増やすことに躍起になり、「ハイ、絵カードね!」ということになってしまうのかも知れませんが、それでは本当のことばは育ちません。ことばは当たり前のことですが、やはり心と心のつながりであるコミュニケーションの中で育つのです。そして、実体験がことばの力を後押しするのです。

 

これはうちの犬。納戸に入っているボールが欲しくて訴えています。

「ペットボトルで遊ぼうよ」と誘っても、「いえいえ、ボールでお願いします」と言っているところ。

 

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第41回 ろう・難聴教育研究大会のご案内

ろう難聴教育研究会 第41回夏の大会

 

ろう難聴教育研究会の夏の大会が来週開催されます。

今年は大会での初めての試みとして、「ヴァンサンへの手紙」の映画上映を行います。その後、この映画を日本に紹介してくださった牧原依里さんと「デフヴォイス」「慟哭は聞こえない」の著者である丸山正樹さんとの対談が行われます。

 

2019年8月24日(土)・8月25日(日)

会場:日本大学文理学部 オーバルホール(図書館3階)

問い合わせ先:Fax 03-3884-9582  info@edh.main.jp前田芳弘

       Tel 03-3579-8355 森崎恵子

参加費:会員一般 2日間 5000円 1日のみ参加 3000円

    会員学生・親   2000円         1000円

    非会員一般    7000円                4000円

    非会員学生・親    4000円        2000円

 

<プログラム>

8月24日

10:00~12:00出版記念講演 南村洋子

13:00~15:00 映画上映「ヴァンサンへの手紙

15:00~16:30 牧原依里(映画作家)さんと丸山正樹(小説家)さんとの対談

 

8月25日

9:00~10:20 出版記念講演 矢沢国光

10:30~12:00ろう学校の教育実践報告「自ら遊び、自ら学ぶ<ろう保育>を掲げて」

      戸田康之(大宮ろう学園)

13:00~16:50 「聴覚障害教育は人工内耳とどう向き合っていけば良いのか」

      医療の立場からの情報提供・問題提起 斎藤宏(帝京大学病院 言語聴覚士

      幼児期からの人工内耳装用者の思い 

                        田口佳祐(千葉県立柏特別支援学校教員)・宮寺智成(appleストア)

         曽根一輝(松山聾学校教員)・設楽明寿

 

 

    

 

 

 

子どもたちとその環境

すっかりご無沙汰してしまいました。

 

ある先生と話をしていて、今の日本の問題を感じました。

「うちの孫の以前通っていた保育園は園庭がなかったんだ。帰宅した孫に「今日はお散歩に行った?」と聞くと、「うん、行ったよ。ぶらり散歩!」って言うんだよね。大きな箱型のベビーカーに4〜5人が押し込められて、それで散歩に行くんだよ。それが散歩なんだよ」

な〜んて話をしていました。

そのほかにも、プールは狭いベランダ。遊びは部屋の中でおもちゃで遊ぶ・・・

 

以前、幼児教育を研究していらっしゃる青木久子先生が「子どもは天と地の間で育つ」とおっしゃっていました。つまり、太陽と空と大地がある屋外での遊びの中で育つと。

 

日本は教育にお金をかけない国なのだなぁ〜、とつくづくと思います。待機児童を少なくする対策として、保育園を建てたのはいいけれど、子ども同士がかけがえのない幼少期を過ごすにはお粗末過ぎる。保育する箱があって、子どもなん名に保育士の先生がなん名をとにかく集める。遊びは適当にオモチャをあてがい、園庭はなくても近くの公園がその代わりになるようならそれでOK!そ〜んな感じ。

 

小さい頃の子どもの遊びって想像力を育てるためにとても大事。たとえば、子どもたちがハマるごっこ遊び。ヒーローごっこ、お姫様ごっこ、先生ごっこ、お母さんごっこ。あるいは物語をそのまま再現して遊んだり、その舞台をみんなで作ったり。そんな遊びをするにはやっぱり「天と地の間の空間」が必要になってくる。公園でやるには1回1回片付けないといけなくなったりするから、やっぱり片付けなくてもまたすぐにその続きができる場所があるといい。

 

河合隼雄先生が本の中でこんなことを書いています。<子どもは ごっこ遊びの中で遊ぶことで、自分は強いんだ、正しいんだ、というのを体験できる。問題はこれで終わりか、と思っているところに、また追い討ちがくる。そんなことも遊びの中で経験できる>

 

三つ子の魂百まで、というけれど、これからの日本の未来である小さい子どもたちが、たくさんの豊かな経験を享受できる環境で育ちますように!と願わずにいられません。

行政の方!ぜひ、考えてください。自分の子どもだったら、自分が子どもだったら、という想像力のもと!

 

そんなことを考えた数日間でした。

 

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すべては想像することから

ろう学校の乳幼児教育相談と発達センターでのお仕事をずっとしています。聴覚障害発達障害のお仕事で、分野は違うのですが、仕事の核になる考え方は同じだな、とつくづく思います。

 

大きな類似点は、親御さんにお子さんの特徴をお伝えし、その子のことをできるだけ理解していただくように支援をする、ということです。

 

今朝、テレビを見ていたら、新国立競技場をデザインした隈研吾さんがこうおっしゃっていました。<自分中心で考えない。木に寄り添わないと、良い木造建築はできない>

宮大工の西岡常一さんも「木のいのち 木のこころ」で同じようなことをおっしゃっていました。私がさせていただいているお仕事は、まさにこの考え方に通じるものがあります。

 

聴覚障害分野で言えば、お子さんの聞こえない・聞こえにくい世界を理解していただくように親御さんに伝えていく。聴覚障害とはどんな障害なのか。どんな風にコミュニケーションをとっていけば良いのか。子どもはどんな状況で日々を過ごしているのか。そしてどんな大人になっていくのか、などを親御さんに伝えていく。そして親御さんがお子さんに寄り添えるように。立ち位置が<聞こえる自分>ではなく、<聞こえない・聞こえにくい子ども>に合わせられるように。

 

発達障害分野では、子どもたちはどんな世界に日々暮らしているのか。お子さんの一見すると困った行動が、何からきているのか。どのようにすればコミュニケーションをより良くとれるのか。お子さんの発達の状態や特徴。どんな風に成長し、どんな風に支援をしていく必要があるのか。親御さんがお子さんに寄り添えるように。

 

私は子どもたちの代弁者として親御さんに伝える。親御さんの様子やキャパシティー、そして親御さんと私との関係性も考慮して、今、お子さんに関することで伝えておいた方が良いことは、たとえそれが厳しい内容であったとしても伝えていく。それがきっとこの子のためになるから。

 

そんな気持ちで日々お仕事をさせていただいています。

 

たぶん、すべては想像することから。

愛すること、信じること、想像すること。

子どものことを愛すること。子どもの成長を信じること。そして子どもの生きている世界を想像すること。

 

庭の大石プラムに今年も実がつきました。すっごい甘い!木が大きくなりすぎて、高いところの実は取れなくなってしまいました。

 

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南村洋子先生の本

南村洋子先生の2冊目の本ができあがりました。

「子どもとママと担当者と3年5ヶ月の軌跡」という本です。この本は、保護者が書いた生活の記録に南村先生がコメントを書く、という形の実践事例集となっています。

何歳何ヶ月頃にはどんな関わりをして、子どもとはどんなコミュニケーションをとり、どんな遊びをしているのか。聞こえない・聞こえにくい子の子育てだけでなく、聞こえる子の子育てにも参考になる本だと思います。

 

では、本の一部を抜粋・・・

2歳5ヶ月の頃のとも君

<(母親の記録)よる、家族で団欒中にともが「お父さんとお母さんとお兄ちゃんとともと動物園に行った。ともは馬に乗った。お兄ちゃんは黄色いヘルメットをかぶって、馬に乗った。ともはピンクのヘルメットをかぶって、馬に乗った。ともは高くなった」と話した。お父さんが「動物園で一番楽しかったことは何?」ときくと、ともは「にんじん、ヤギにどうぞして、ヤギ食べた」と答えていた。お父さんが「ヤギはこうやってベロ出して食べたね」とヤギの真似をすると、ともは大喜びで同じように真似をした。お父さんは、ともが今日あったことを思い出して、自分から話し出したことに感動し、コミュニケーションが取れることに驚いていた。>

<コメント:過去の経験を語れるようになったとも君。そのようすに驚き、喜びを隠せないお父さん。そうです。とも君は耳が聴こえないだけです。コミュニケーション手段が、聴こえる人とちがうだけでした。コミュニケーション手段を幼い聴こえない子どもに合わせるだけで、家族団欒のときに、対等にお話ができるのです。楽しい団欒が家族みんなのものになっています。>

 

2歳5ヶ月の頃のあるお子さんの様子です。この2歳5ヶ月になるまでに、家族が手話(と音声を使って)で丁寧にコミュニケーションを取ってきた積み重ねがあることを忘れてはいけません。<ただ単に手話を使えばいいのか?>ということではありません。手話を共通言語にして、子どもの視線の先にあるものを一緒に見て、子どもが今何を見ているのかを考え、何を考えているのかを想像し、子どもと視線を合わせ、子どもの心に寄り添い、共感しながらのコミュニケーションを毎日とってきた結果なのです。

こうなるまでにどんな関わりが必要なのか?この本を読まれると、たくさんのヒントが見つかると思います。

 

ご購入希望の方は、
ろう・難聴教育研究会事務局(前田芳弘)
tcymaeda@hotmail.com
Fax:03-3884-9582
(1冊1000円)

ハート&コミュニケーション
Kotoba-heart.com

 

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ろう難聴教育研究会 第41回夏の大会

ろう難聴教育研究会 第41回夏の大会

 

ろう難聴教育研究会の夏の大会のプログラムが決まりました。

みなさん、ぜひご参加ください。

今年は大会での初めての試みとして、「ヴァンサンへの手紙」の映画上映を行います。その後、この映画を日本に紹介してくださった牧原依里さんとの対談を考えています。

 

2019年8月24日(土)・8月25日(日)

会場:日本大学文理学部 オーバルホール(図書館3階)

問い合わせ先:Fax 03-3884-9582  info@edh.main.jp前田芳弘

       Tel 03-3579-8355 森崎恵子

参加費:会員一般 2日間 5000円 1日のみ参加 3000円

    会員学生・親   2000円         1000円

    非会員一般    7000円                4000円

    非会員学生・親    4000円        2000円

 

<プログラム>

8月24日

10:00~12:00出版記念講演 南村洋子

13:00~15:00 映画上映「ヴァンサンへの手紙

15:00~16:30 牧原依里さんとの対談

 

8月25日

9:00~10:20 出版記念講演 矢沢国光

10:30~12:00ろう学校の教育実践報告「自ら遊び、自ら学ぶ<ろう保育>を掲げて」

      戸田康之(大宮ろう学園)

13:00~16:50 「聴覚障害教育は人工内耳とどう向き合っていけば良いのか」

      医療の立場からの情報提供・問題提起 斎藤宏(帝京大学病院 言語聴覚士

      幼児期からの人工内耳装用者の思い(登壇者打診中)

 

 

 

    

 

 

 

聞こえない子を育てているお母さんの10箇条

みなさん、どのようなゴールデンウィークをお過ごしですか?

私はある人と再会し、食事をしました。その人は型破りで破天荒。だから、話していると違う視点が入ってきて、なんだかエネルギーが湧いてくる。不思議な人。

 

今日は子どもの日ですね。新聞のコラムにこんな記事が出ていました。

少子高齢化の加速により、家族の形は当時よりもさらに変化している。・・・電車内ではスマホに見入る幼い子供をよく見かける。幼児向けの動画があるらしい。自立にも見え、孤独にも見える。子供の居場所を思うとなんとも複雑である。スマホの幼児は、手持ちぶさたに中吊り広告を見る母親と、居眠りする父親に挟まれていた。これも現代版の家族の形かと、こどもの日にふと思う>

 

そんな記事を読み終えたあと、私が担当している、聞こえない・聞こえにくい子どもを育てているお母さん方、ひとりひとりを想いました。

みなさんひとりひとり真剣に子どもと向き合おうとしている姿に、本当のあるべき家族の姿の象徴が見えるようでした。

 

この3月、4月から1歳児クラスに入るお子さんのお母さん方に、1年間の想いを語っていただきました。あるお母さんの発表原稿がとても素晴らしかったので、それをこのブログを読まれている皆さんにもお伝えいたします。もしかしたら、このブログを読んでくださっているかも。

聞こえない・聞こえにくい子どもを育てる、育てないに関係なく、子育ての基本が書かれていると思われます。そのお母さんが大切にしているコミュニケーションの10箇条です。

 

<コミュニケーションで大切にしている10箇条>

  • タイミングを考える
  • 気づきをつくる
  • 目線を確認する
  • 目を合わせる
  • 視界に入ってから話す
  • ゆっくり話す
  • 確認する、選ばせる
  • 表情豊かに話す
  • CL表現を豊かに話す(かわいいね で終わりではなく、どうかわいいのかを形のまま、見たままを伝える)
  • 話が終わるまで目をそらさない

手間のかかる方法です。ストレスです。

きこえる子だったら、どんな感じだろうか、と想像することがたまにあります。でも、その方が楽だろうな、と思うことはほぼありません。きこえる・きこえないに関係なく、子育てはストレスフルなのだから。

 

 以上がその発表原稿からの抜粋です。

 

 さっきの型破りで破天荒な人から、どんな状況にあっても「いつもサイコー!」と思って生きるようにと。こういうおもしろい人が私の近くにいてくれる、というのは、ある意味でサイコー!

 

 バラの花が咲き始めました。ロイヤルサンセット。

 

 ことばの相談室ハート&コミュニケーション 

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(ホームページを新しく変更お願い中です。ユッキーさん、お願いします!)

 

 

 

 

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