『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

本物のことばを育むために

 以前こんなお子さんに会いました。お子さんは発達に遅れがあり、小さい頃から<言語訓練>に通っていました。お母さんは熱心な方で、お家でもその<言語訓練>を続けていたのだと思います。いつも使っている絵カードでは、「リンゴ どれ?」と言うとちゃ〜んとリンゴの絵カードを取ってくれます。でも、でも、本物のリンゴを見ても<リンゴ>を選べないのです。うわ〜っ、っと頭を抱えてしまいました。

 こんなお子さんもいました。目の前にあるたくさんの絵カードの中から「遠足」というカードを取ることができます。でも、でも、そのお子さんは本当の遠足に行ったことがない!うわ〜っ、っとこれまた頭を抱えてしまいました。

 

 ことばを育むイコール絵カードではありません。それはナンセンスで短絡的な考え方です。それは私たちの育ちを振り返ってみれば分かることでしょう。ことばが遅れているというと、絵カードで言語訓練!なんて発想になってしまいがちですが、ことばはそんなことで確実にその子の中に育まれることにはなりません。

 ことばは全体発達の一部です。その子の発達全体を見る必要もあります。身体の発達、心の発達、知的な面での発達、手先の発達を土台にし、ことばの発達があります。ことばだけが遅れている、ということはほとんどありません。そういう見方も大切になってきます。

  絵カードでは取れるけれど、本物では分からない。そんな子どもに育てないように、日々の生活の関わりの中でのコミュニケーションを大事にしていく。

 リンゴのイメージをその子の中にたくさん育てたいのなら、リンゴの絵本(リアルなリンゴの絵やリンゴの写真の絵本が良いです。)を見ながら「リンゴを買いに行こうね。」と一緒にスーパーに買い物に行く。スーパーにはたくさんの色のリンゴが売られています。「赤いリンゴだね。黄色いリンゴもあるよ。」など一緒に見ながら、話しかけをしながらリンゴを選ぶ。選んだリンゴを買い、家に戻り、さっきの絵本とマッチングする。そして、子どもの目の前でリンゴをむく。皮をむく時に長〜く連なるようにしてあげると子供はきっと大喜び。そして食べやすい大きさに切って、いただきます!食べながら、「美味しいね。甘いね。いい匂いだね。」などたくさんの話しかけができます。その子の中にどれだけリンゴのイメージを植え付けられるかが大事なポイント。イメージがことばの概念をつくるのですから。

 一回の経験だけでは無理です。繰り返し、繰り返しが大切。そして繰り返している内に、「リンゴを食べよう」という話しかけだけで、リンゴを冷蔵庫から選んで取り出してママに渡すことができるようになるでしょう。あるいは、スーパーのあの大きな空間の中のたくさんの刺激がある中で、「リンゴ」を選んで買うことができるようになるでしょう。あるいは見せてきた絵本のリンゴを見ながら食べる真似をしてくれるようになるでしょう。

 

 本物のことばを育むための手間と時間を惜しまないように。そしてこういう関わりは全ての子どもにとって大事なことです。

 

うちのニャンコ。寒いから布団をかぶって寝ています。

 

ハート&コミュニケーション

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