『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

南村先生の本

私の恩師である南村洋子先生の本ができました!

 

初めて南村先生にお会いしたのは、先生がトライアングルの教育主任をおやりになっているときでした。実習先が数日前になって急きょトライアングルになったのです。本当は別の小児施設へ実習に行くことになっていたのですが、そこへ実習に行くことになっていた同期が突然行けなくなり、私と交代することになったのです。

 

私は本当にとんでもない人で、聴覚障害に関しては一応は勉強していたのですが、まったくと言っていいほどに興味がなく、何もわからないまま実習の日を迎えました。

その実習での様子は以前書いたブログ(2017年9月 理想的な子育てのチャンス! http://heart-kotoba.hateblo.jp)でちょっと紹介しています。

 

南村先生に会うまでは、私は言語聴覚士の仕事の王道である、失語症の分野での言語聴覚士になることを目指していました。今は亡くなった父が50歳のときに脳梗塞を患い、その様子を見ていたからです。失語症にはならなかったのですが、右脳のダメージが大きいとやっぱり変なのですよね。コミュニケーションが成立するようで成立しない。噛み合わない。父がきっかけでこの道を目指すことになったと自分自身を理解したのは、だいぶあとだったのですが。また、あの時代のリハビリの施設での専門家と言われる方達の対応にも、父と一緒に悔しい思いをしたことがありました。

 

不思議ですね。人間の縁は。

私は南村先生に会わなかったら、小児の分野での仕事はしていなかったのです。

なぜ、聴覚障害の分野に興味を持ったのかを考えると、やはり海外での生活が長かった、ということがあげられると思います。異文化の中で暮らすって、ある面ではとっても大変なのですね。いつも緊張しているというか、なんか地に根っこが生えないというか。いつも疎外感的なものを味わい、そして誰かと一緒にいてもなんとも言えない孤独感があるのです。言葉の面でも、冗談なんて一緒に笑えないことが多い。言葉の壁を克服したとしても、その国の人が小さい頃から、皮膚から吸収するようにして育まれることばや文化の前では、私は入っていけないただの外国人なのです。冗談なんて宗教からくる冗談もあるので、よくわからないことがある。そして重苦しくなるような街並み。何百年も前から建っている歴史のある建物。その街並みは、何百年も前から何も変わらない。そういう中での暮らしを体験し、コミュニケーションについてすっごく悩み、その体験が多分重なったのだと思います。

 

南村先生のところでの実習のとき、フランス人の中にいて、私ひとりが笑えないという体験を話しました。そのときに南村先生が「でも、あなたは聞こえる人だから、わからないことがわかるのよ。そこにその情報があることがわかり、自分がわからなかった、ということがわかる。そこが違うの」と言われたことを思い出します。

 

言語聴覚士という仕事は一般的な仕事ではありません。<普通>に生活してきたら、多分、一般的には、<普通>には選ばない道だと思います。

言語聴覚士に限らず、こういう仕事、こういう勉強をするということは、自分の中に何かきっかけがある、ということなのです。自分の中に問題や解決できていない問題があり、興味がわく。そういうことだと思っています。

だから、聴覚障害教育に限らず、障害児教育に携わっている人は、変な言い方ですが、自分は<一般的な道や考え方から外れた>という思いを持ちつつ、自分自身を見つめながら相手に接することが大切と思っています。

 

南村先生の本。ハート&コミュニケーションでも売っています。どうぞハート&コミュニケーションのホームページのメールからお問い合わせください。1冊1200円です(送料は別)。

 

ハート&コミュニケーション

http://kotoba-heart.com

 

f:id:heart-kotoba:20180731133121j:plain