『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

プロセスを大事に

 発達の遅れがあり、目が合いにくい年長さんのお子さんの相談。ことばでの表出はまだなく、欲しいものがあると指差しで要求。大人しくて素直なお子さんなので家庭では困ったことがないとのこと。お母さんなのでお子さんの伝えたいことはよく分かる。

 例えばこんなお話がありました。家に帰って来ると必ず冷蔵庫の前に行き指差し。お母さんは大好きなウインナーを要求されているとすぐに分かります。お母さんは「ウインナーを食べたいの?」とその子の言いたいことを代弁。その子はお母さんに指差しで伝えると、テーブルについて出てくるのを待っている。ウインナーはいつも冷蔵庫に常備。気長に待てるお子さんなので、出てくるまでジッと待っていて、出てきたウインナーを食べる。家庭では困ったことがない。代弁もしているし、それ以上、どうすればいいのかよく分からない、とのこと。

 そのお母さんにお伝えしたことは、もし、余裕があったら、次回はウインナーをわざと常備せず、一緒に買いに行ってみたらどうかな?ということでした。お母さんはその提案に最初は「?」。いつもあると思っていたウインナーがなかったら、ビックリでしょうね。でも、そういうハッとする経験ってとっても大事です。なぜなら、心が動く経験だからです。

 いつも買っているウインナーの写真を撮っておき、写真カードを作る。その子が冷蔵庫を指差しして要求してきたら、冷蔵庫を開けて、一緒にウインナーを探す。「ウインナー ないね。」とウインナーの写真を見せて、「じゃぁ、一緒に買いに行こう。」スーパーの写真も作っておき、この時の買い物はウインナーだけにする。

 買い物に行く前、行く途中にウインナーの写真を見せる。「ウインナー買うんだよ。」ということばかけも一緒に。そして、スーパーに着いたら、スーパーの写真を見せ、マッチング。そしてウインナーの写真を見せ「ウインナーを探そうね。」と言いながら、たくさんの商品が並んでいるスーパーの中でウインナーを一緒に探してみる。ウインナーがあったらすかさず写真カードで再びマッチング。「ウインナーおんなじだね。買おうね。」とカゴに入れてレジに持って行く。家に帰ったら、そのウインナーを袋から出して一緒に茹でる。お皿に出して、「さあ、召し上がれ!」 食べ終わった後にもう一度ウインナーの写真を見せて、「ウインナー食べたね。」など振り返り。ウインナーの写真カードやスーパーの写真カードは、子どもの手の届くところにいつも置いておいてあげること。そんなことをお話ししました。

 

 一連のプロセスを見せること。それは「ウインナー」というイメージをたくさんその子の中に育みます。ウインナーはいつも冷蔵庫にあるものではなく、こんな風に買いに行くものという経験は、将来の自立のことを考えた時にとても大事なことでしょう。そして、繰り返すうちに、だんだんと色々なことがその子の中で結びついてゆき、その内、ウインナーを食べたい時、買いたい時、茹でたい時、食べた後などに写真カードをお母さんに見せにくるようになるかも知れません。写真カードがその子の中でことばとして使われるようになるのです。写真カードは本当に便利。そこになくても写真を使って何度でもコミュニケーションが取れるのですから。

 

 お母さんはその提案を聞き、こんな感想。「ウインナーが袋に入っている、ということもきっと知りません。スーパーで買うことももちろん知りません。茹でることも知らないし、お皿に出てきたウインナーが彼の中でのウインナーでした。やってみます!写真カードも作ってみます。」

どうだったかな?お母さんからの報告を聞くのが楽しみ!

 

うちのワンコ。耳を立てて何かを見てる!

 

ハート&コミュニケーション

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