『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

新スクでリファーとなり、コロナで相談にいけない親御さんへ 4

 昨日は手話のお話をしました。どうぞお子さんが0歳児の間に手話を獲得してください。そうしておけば、1歳以降のコミュニケーションがとても楽しくスムーズになります。そして、どんな聴力の子どもに対しても、手話が必要になります。なぜなら、音声言語は聞こえない・聞こえにくい子どもにとって不確実なものだからです。

 

聞こえない・聞こえにくい障害は音声言語で100%の受信が難しい障害であり、人工内耳にしても同様です。音声言語のみで育つと、はっきりしない状況の中で育つことになるので、音声言語も中途半端、日本語の読み書きも中途半端、言語能力自体が中途半端になってしまう恐れがあります。だから、聞こえない・聞こえにくい子がはっきり分かる「手話」を使って欲しい。

 

また「音声言語が出るまで手話を使って、音声言語が出たら手話をはずしましょう」などどアドバイスをする専門家がいますが、手話は言語なので外しません。私たちだって日本人で、日本語ができるようになったからって日本語を外さないでしょう。

軽中等度難聴の子どもたちは、誰もがみな、最初に手話が出て、そのあと音声が出てきます。途中から音声言語での会話のほうが人間は楽なので、音声のみでの表出になってきてしまいますが、親は絶対手話を使い続けてください。

 

これはあるお母さんの手記。 

予定日より9日遅れで〇〇は生まれました。数日後の新生児スクリーニング検査で両耳リファーという結果を知らされ、でもその時は「新生児スクリーニング検査」と言う言葉すら知らず、産科のベットの上でスマホで検索したのを覚えています。(途中略)

1歳になり、再度ABR検査をしたところ、聴力は両耳とも50~60dbくらい、3月から補聴器を装用することになり、装用直後の4月からの保育園通園は可能なのか、どこか相談できる場所はないかと調べ、ろう学校に電話しました。関根先生にお会いし、どんなに軽い難聴でも想像以上に聞こえていない、手話が必要だということを初めて伺いました。

それから補聴器装用とともに1歳3ヶ月頃からろう学校ひよこ組に通い始めました。〇〇は呼べば振り向くし本当に手話は必要なのだろうかという思いもありましたが、難聴体験で身をもって〇〇の聞こえにくさを知り、少しずつ手話を会話に織り交ぜ生活し始めました。初めは手話で会話する時に〇〇と目線が全く合わず、〇〇の前に回り込んでは手話をしていました。すると1歳5ヶ月くらいには「もう1回」の手話をするようになり、その1ヶ月後くらいには「おいしい」の手話をするようになり、日に日に手話表現が増えていきました。初めは私がした手話を同じような場面でするだけでしたが、真似ではなく自分で感じたこと、考えたことを表出するようになった時は、まだ話すことのできない〇〇と本当に会話をしているんだと感じ、感動を覚えました。

〇〇は2歳頃になってやっと5語くらい声で言葉を話すようになりました。それが2歳1ヶ月頃には40語、それからは日に日に声で話すことが増え、2歳5ヶ月頃には270語程も話すようになりました。寝言も手話から声の寝言に変わっていきました。簡単な会話は手話なしでも通じ、口話でのコミュニケーションも増えました。すると今度はせっかく覚えた手話の表出がどんどん減っていきました。どうしたものかと思っていたところ、ろう者の多い環境で声のない手話だけでのコミュニケーションを重ねる機会があり、それ以来また手話の表出が多くなるようになりました。思い返せば私が声なしで手話をすると、意味は分かっているはずなのに全く返事をしなかったり声を出すよう促したり、声なしの会話に応えようとする素振りが全く見られませんでした。手話はジェスチャーの様な認識になっていたのではないかと思います。ろう者とのコミュニケーションの経験を通して、〇〇は手話を言語として捉えることができたのではと思います。最近は時折声なしの会話を2人で楽しんでいます。

 

NHKバリバラで難聴者の聞こえについてわかりやすく説明しているものがあります。

どうぞ見てみてください。

https://jinkounaijikansai.amebaownd.com/posts/5682929/

 

 

ハート&コミュニケーション 関根久美子

Kotoba-heart.com

 

 

これはニューヨークに行ったときの写真。

 

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