『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

新生児聴覚スクリーニング検査(新スク)でリファーとなり、コロナで相談にいけない親御さんへ 8

昨日は「ことばって何?コミュニケーションって何?」というテーマでした。

今日は「発達について」というテーマでお話をします。以前、書いたことのあるものに手を加えて、ブログに載せたいと思います。

 

たくさんのお母さんとお会いしてきましたが、その中で最も多い質問は<ことば>に関するものです。お子さんの<ことばの発達>が一番気になってしまうのはもちろん分かります。でも<ことばは全体発達の一部>なのです。そして<発達には順序があり、その子その子のペースで伸びていく>ということ。

 

子どもの発達のベースは「からだ」です。その上に「心の育ち」、その上に「知力」、そして一番上にに「ことば」が乗ります。「ことば」の力を大きく育てたいならば、その下の部分を大きく育てていく必要があります。

 

まずピラミッドの一番下、「からだ」の部分をお話しします。やはり「身体が資本」なのです。私たちは生まれた瞬間から死ぬまで重力と戦っています。首を動かせるようになり、寝返りを打てるようになり、お座りができ、立ち上がれる。これはすべて重力に逆らう力が育つから獲得できることになります。重力に立ち向かうためには必要な身体作り。そのために大切な事は規則正しい生活。よく食べて、よく寝ること。夜更かしをさせないこと。これは脳の栄養になります。身体の発達に合わせた充分な運動も必要です。飛んだり、跳ねたり、投げたり、走ったり、でんぐり返りをしたり。。。色々な身体の動かし方ができることは、自分のボディイメージ(自分の身体が空間の中でどんな風に存在しているかが分かること)が習得できてきたことでもあります。ジャングルジムをくぐり抜ける時に頭がぶつからないように腰をかがめるでしょう。あれは自分のボディイメージがしっかりできていないとできないことなのです。赤ちゃんの頃は自分の手を舐めてみたり、手や足を触ってみたり触られたりしながら自分の身体を確認してきました。ろう学校でもグループの時に「ぞうきんの歌」などを楽しんでいますね。あれらの体操もすべてこのボディイメージを育むことにもつながっています。

 

そしてその次に「心の育ち」。これはコミュニケーションのベースでもあります。ママのことが好き。パパのことが好き。にっこり笑うとママもにっこり笑い返してくれる。ママとの間に育まれる共感関係や愛着関係。好きな人に伝えたい。好きな人と分かり合いたい。そういう心が育つことは、ことばの意欲につながり、ことばの成長を促します。

 さて次に「知力」についてです。代表的なものに「手を使う力」が挙げられます。手は第2の脳といわれます。以前、ピアジェという発達心理学者の「知性の誕生」という本を読んだことがあるのですが、その中に書かれていることは、赤ちゃんがどんな風に手を使っているか、という観察でした。何百ページもその観察が書かれているのですよ!

 手を伸ばして物をつかむようになり、物を持ちそれを持ち替えようとし、物をつまめる様になり(つまめるようになると一般的に初語がでます)、積み木を上手に積めるようになるまでに微細な動かし方ができるようになり、右手と左手を同時に別々の動きで動かせるようになり、上手に鉛筆を持てるようになり、タオルを絞れるようになり、トイレで上手にお尻を拭けるようになります。

 日常生活の中で色々な手の動かし方を経験させるようにしていきましょう。食事のときに手掴み食べをするなど、とても良いと思いますよ。手を動かしつつ目を使うことを「目と手の協応」といいますが、それは学習のベースとなります。お家でもお手伝いの中で育んでいってください。

 感覚過敏がある子は物に触ったりすることが苦手ですが、少しずつ少しずつ触れるようにさせていきましょう。まずはママが積極的に触っているところを見せ、大丈夫だということを示して安心させてあげましょう。一度ではすぐに触れるようにならないかもしれません。でも繰り返す内にきっと変化があります。手で触るのが難しいようだったら道具を使って触らせてみる経験も良いでしょう。

 子どもがひとりで出来そうなことはできるだけひとりでやらせてあげましょう。見守ることは時にとても難しいことです。でもひとりでできたという経験はその子に自信を与えます。

 

「身体」「心」「知力」の一番上に乗っているのが「ことばの力」です。ことばとは無関係のようなことでも、実はすべて「ことば」につながっているのです。

 「ことばの発達」はこれらピラミッドの頂点となります。この部分を大きく豊かに育てたいのならば、その下の部分(身体•心•知力)を大きく育てる必要があるのです。

 このような大きな視点でお子さんを見ていくと、お子さんの全体を見れるので、
良いと思いますよ。

 

最後にご自分のお子さんの発達だけでなく、他のお子さんの発達も同じように喜びましょう。他のお子さんが発達することは、ご自分のお子さんも影響を受け発達するということですから。  

 

さて、今日の写真は、フランスのお友達の家の庭で遊ばせてもらっている息子たちの写真。もう十数年前のもの。これ、普通のおうちの庭なんですよ。庭の向こうに気球が飛んできて、それを追いかけに行っているところ。今、フランスも大変なことになっていて心配。フランスはとっても豊かな国でした。

f:id:heart-kotoba:20200420142619j:plain

 

 ハート&コミュニケーション 関根久美子

  Kotoba-heart.com