『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

<新生児聴覚スクリーニング検査(新スク)でリファーとなり、コロナで相談にいけない親御さんへ 11>

今日は「補聴器と聞こえ」について。

SNS の投稿を見ると、補聴器をつけての反応について「聞こえてるのかなぁ」と心配されているママ達の投稿がおおいですね。今日は、そのことについてちょっとお話しします。

 

補聴器をつけると直ぐに反応が見られるのではないか、と期待して試聴させてみたけれど、なんだか反応がよく分からないなぁ〜。これは結構当たり前のことです。

補聴器はメガネと違い、直ぐに反応が見えないのです。残念だけれど、ちょっと時間がかかる。人工内耳をしても同じですよ。

 

それに補聴器をつけたとしても、私たち聞こえる人と同じように聞こえるようになったわけではないのです。聞こえる人は0dBという音も聞こえるのです(加齢とともに聞こえは変化しますけど・・・)。それに、私たちは聞きたい声や聞きたい音にスポットを当てて聞くことのできる聴覚をもっています。例えば、騒がしいところで、その騒音をカットし、聞きたい人の会話だけに焦点を当てて聞くことができるのです。でも、補聴器は周りの騒音もママの声もいっぺんに入ってきてしまう(人工内耳も同様)。なので、ちゃんとママは〇〇ちゃんに話しかけていますよ〜、と分かってもらうために、きちんと目を合わせて、手話や大げさな表情をつけてのコミュニケーションが大事になってくるのです。

 

音も今までちゃんと聞いたことがないから、何が音なのかが直ぐには分からないのです。しかも、その音が何を意味するかもわからない。

私たち聞こえる人は、音に意味づけをしています。音には意味があるのです。例えば、廊下をパタパタと歩いてくる人の足音。このパタパタの足音は、きっと〇〇さんかな〜とか、玄関の鍵の開ける音がしたから、きっと誰かが帰ってきたのかなぁ〜とか。そんな風に音に意味づけをしながら生活をしています。

もし、赤ちゃんが音に気付いたら、直ぐにフィードバックしましょう。例えば、ママがお鍋の蓋を落としてしまって、それに気づいてくれたら、「気づいたね。今、ママ、しっぱ〜いしたよ。蓋を落としたよ」ともう一度、赤ちゃんの見ている前で蓋を落としてその音を聞かせてあげましょう。音と意味が結びつくように。

もし、洗濯機のガタガタの音に気づいたら、洗濯機に手を当てさせ、振動を感じさせながら、「洗濯機 ガタガタだよ〜」と、赤ちゃんがこちらを向いてくれたときに伝えましょう。

 

もし、赤ちゃんの名前をよんで振り向いてくれたら、聞こえる親御さんは「あ!やった!聞こえたんだ〜!嬉しい!」とそれだけになり、呼びっぱなしということが多々あります。そして何度も確かめてしまう。これはやめましょう。赤ちゃんに振り向き損って思わせないように。せっかく気づいて振り向いてくれたのだから、ちゃんとフィードバックしましょう。

「〇〇ちゃん、って言ったよ。よく分かったね〜!じゃぁ、抱っこしようね」など。ママがニコニコしながらそういう対応をとってくれたら、また振り向きたくなりますね。

それから、私たちのようにきこえてはいないので、しかも感音性難聴だと音がひずんで聞こえることがおおいので、(「新スクでリファーとなり、コロナで相談にいけない親御さんへ 4」の最後のURLにアクセスしてください。難聴者の聞こえについてわかりやすく説明しているページです)ママが「〇〇ちゃん」と呼んだとしても、私たちの耳には「〇〇ちゃん」と聞こえても、赤ちゃんの耳にはどんな風に聞こえたのかはわかりません。

「くみちゃ〜ん!」がもしかしたら、「ういあ〜」って聞こえてるかも知れません。なので、きちんと目を合わせて、指文字の「く」をつけたりして、視覚的にもフィードバックしてあげてくださいね。

 

そして、聞こえているのかどうかはっきりした反応が見えなくても、きちんと目を合わせて、表情、手話、音声をつけて話しかけてあげましょう。赤ちゃんの気持ちを代弁するのがいいですよ。

 

そういう対応を少なくとも半年から1年くらいは続けること。

補聴器の効果は赤ちゃんの声の出し方で見ていきます。最初は大きかった声が、だんだんと柔らかなこえに変わっていくとか、補聴器をつけると確かめるように声を出すとか、「あ〜」「う〜」だけだったのが、それが「あ〜、あ〜、あ〜」と繰り返しになったり、「あ〜、う〜」となったりしていきます。そういう風になるまでにはしばらく時間がかかります。焦らないで。

 

補聴器の設定は最初は小さめから始めます。赤ちゃんのちゃんとした聴力を分かるのには時間がかかるし、その子の発達とも大きな関係があるし、最初から大きな音で入れてしまって、本当は実はもっと聞こえていた、ということになると、赤ちゃんの耳を壊してしまうことになるからです。

 

それから、どんなときに外してしまうのかもよく観察しておいてください。外すのには赤ちゃんなりの理由があります。

生後半年過ぎると、手先の器用なお子さんでは自分から補聴器を外してしまうことがあるのです。外したとしても大慌てで対応しないこと。「ウッシッシ。これを外すとママが来るぞ〜」と思って、わざと外したりする子もいます。そして、しばらくしてからまたつけてみるように。

 

補聴器をつけたり、外したりするときには、ちゃんとお子さんに見せること。「補聴器をつけるね」「補聴器を外すよ(外したら、見せる)」

 

補聴器の試聴がまだ先のときは、焦らないこと。今できることをちゃんとやること。目を合わせて、手話と音声と表情、実物、カードなどを使って話しかける。それをちゃんとやっておくと、補聴器をつけたときに生きてきます。「あ〜!これがママの声だったの?よ〜く聞こえる!」って思ってくれますよ。

それから人工内耳を決める前に、充分、補聴器で試してみることをお勧めします。

 

またまた長くなってしまいました。なんでもメールで気軽にご相談ください。必要ならば電話していただいてもいいですよ。無料で〜す。

 

ハート&コミュニケーション 関根久美子(言語聴覚士

Kotoba-heart.com

k.sekine@kotoba-heart.com

 

f:id:heart-kotoba:20200423154441j:plain