『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

聞こえない文化

先日、多方面で活躍されている聞こえない方の講演を聞く機会がありました。その方は人を惹きつける話術と豊富な話題と知識の持ち主です。

 

私が初めてその方のお話を聞いたのはもうずいぶん昔のこと。<理想的な子育てのチャンス>というブログで書いた先生がおやりになっていた教室で、聞こえない子供を育てている親御さんに向けた勉強会に参加させてもらった時のことでした。その時のお話の内容は<聞こえない文化と聞こえる文化の違い>。その内容は私にとってとても興味深く、かつ納得できるものでした。

 

聞こえる世界ではクラスの友達を一斉に振り向かせたい時に声を使うけれども、聞こえない世界では電気を点けたり消したりする。聞こえない人を呼ぶときにはポンポンと肩を軽くたたく。聞こえる世界では大きな音が出ないようにドアの閉め方に気を配るということを、聞こえる家族から教えてもらった、などなど。初めて聞いた聞こえない人の講演。音声での通訳がついた手話での講演。言語聴覚士の勉強では習わなかった、聞こえない人の話・聞こえない世界・聞こえない文化。

 

その講演でとても印象に残っているのは、聞こえる女の子に書いたラブレターの返事。<友達でいましょうね。>その曖昧な返事の意味がよく分からずにいたら、聞こえる家族がその説明をしてくれた、というお話。<聞こえる文化で 友達でいましょうね は、振られた、ということなんだよ。> 聞こえない文化ではそんな曖昧な言い方はしないそう。そんな話を聞いて、フランス文化に近い聞こえない文化に、とっても親近感を持った覚えがあります。

 

フランス文化でも曖昧な表現は通じませんでした。例えばフランス人の友達に遊びに誘われて、「多分」と答えると、「Kumikoは日本人だからはっきり言わないのかもしれないけれど、多分、という言葉はフランスではOuiだからね。気をつけなさいよ。」 

かといって、なんでもズケズケとダイレクトに言っていいかというと、ちゃんと一線がある。当たり前ですけれどね。やっぱり人間同士ですから。コミュニケーションは気持ちよく。

 

異文化に触れることで広がる自分の世界観そして価値観。人生が豊かになります。

 

うちのニャンコ。なんか王様みたいな感じ。素敵に写りました。

 

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色々なこだわり

自閉的傾向があるお子さん。その子は見え方にこだわりがありました。

 

その子は階段の踊り場の前にあるちょっと奥まった部屋のドアを斜めから見ることが大好きでした。そのドアを色んな角度から、行ったり来たりしながら横目で見るのです。何度も何度も。そしてしばらく観察してから電気をつけてもらうのがまた大好きでした。私も同じように見てみましたが、何が良いのか分かりませんでした(笑)。分からなくて残念。一度見だすと15分、20分、ずっとそんな状態で見ています。これには困ってしまいます。でも、その子の中でちゃんとクラスの先生の序列ができていて、一番信頼している先生の言うことだったら聞くのです。でも新人の先生の言うことは聞きません(苦笑)。だからその先生が来て、その子に「おしまいね」と伝えて一件落着。よく分かっていますねぇ。

 

ある時から、その一番信頼している先生の名前を言うだけで直ぐにやめることができるようになりました。「〇〇先生が終わりって」とか、「〇〇先生に(見てもいいか)聞いて」とか。その子の中で〇〇先生がそこにいなくても、〇〇先生から直接言われなくても、〇〇先生という言葉だけでたくさんのことをイメージができるようになって、自分の中で折り合いをつけることができるようになったのです。すごいすごい!これこそ言葉の力。

 

その子は家庭で他にもちょっとしたこだわりがあり、お母さんが困っていることがありました。その子はゴミ捨て場のドアを開けるのが好きで、それを何度も何度もしたがるとのこと。ゴミ捨て場のドアを開けた時の見え方にこだわりがあったのだと思います。私も相談を受け、一緒にどうすればいいのかを考えました。ことばは発するそばから消えてしまう。視覚的な補助が必要。何回までならやっていいか。今日はやってもいいのか、いけないのか。

ということで相談した結果お母さんは写真カードを作りました。カードは他のことでも使えるようにマジックテープで取り外し可能。回数はその写真カードの下にこれまた取り外し可能な赤い丸。赤い丸が全部なくなったらおしまい。

かなりスムーズになったと報告を受けました。良かった、良かった。

 

下の写真はうちのボクサー犬。寒さが苦手で寒くなると暖房の前でこんな風にいつも寝ています。鼻ぺちゃなのでいびきがすごい!

 

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夜と霧

昨日に引き続きの更新です。

今日はことばとは関係のないお話。

フランクルの<夜と霧>を読み返しました。だいぶ前に読んだのですが、先日テレビで<夜と霧>の話を聞き、もう一度読み返してみようと思ったのです。

 

<私たちが人生に意味を問うのではない。人生が私たちに意味を問うているのだ。> 久しぶりにその本を読み、コペルニクス的な考え方に救われました。

 

イスラエルに旅行へ行った時、その国の美しさと豊かさに感激したものです。イエスが生まれたベツレヘム。イエスが十字架を背負って歩いたエルサレムエルサレムキリスト教ユダヤ教イスラム教の聖地です。身体が浮いてしまうという不思議体験ができる死海。ことばでは言い表せないくらい美しいネゲブ砂漠。

中東というと危ないイメージがありますが、そんなことありません。国に入る時の検査や出国の時の検査などは多分世界一厳しく、ショッピング施設や公共施設に入る時にも荷物検査があったり、街には兵隊さんがいたりと一見物々しいのですが、逆に東京の方が何もしていなくて、私は時々「大丈夫かぁ?この平和ぼけ」と思うほどです。

 

イスラエルに行った時、街の中で腕に番号の入墨がされているお年寄りを見かけました。そして知人のポーランドイスラエル人と話したことを思い出します。

彼女は10歳くらいの時、ワルシャワのゲットー(当時ユダヤ人が収容されていた街の一角)から両親に外へと放り出され、彼女のみが生き残ります。その後、修道院などを転々とし、一人でイスラエルに辿り着いたという歴史を持っています。彼女の持っている辛い過去は、私たちの想像を絶していると思います。彼女の賢さ、温かさ、そして魅力。そしてその中にある、時折彼女が見せる触れてはいけない領域の凛とした暗さに彼女の歴史を感じます。

 

さて、その彼女に聞いた話。彼女の友人の話。詳細は忘れてしまったのですが、内容があまりにも衝撃的で概要は覚えています。

彼女の友人も両親のおかげで、収容所へ送られる汽車からどうにか逃げることのできた男性でした。その男性はドイツの森の中のあるドイツ人夫婦にかくまわれ、終戦を迎えました。その夫婦には子供がいませんでした。その夫婦から耳を疑うようなお願いをされます。それは命を救ってもらったお礼として、子供を作って出て行って欲しいと。そして彼は奥さんが妊娠したのを確認し、イスラエルへと出発します。

イスラエルへ渡り、キブツ(共同村)に住み、結婚し子供にも恵まれ幸せに暮らしていたある日。彼の息子がドイツからキブツにボランティアとして来ていた青年とトラクター事故を起こし、二人とも亡くなってしまいました。後に判明した衝撃的な事実がありました。それは、事故で死んだドイツ人の青年とは、あのドイツ人夫婦の子供だったのです。つまり亡くなった二人は二人とも彼の子供だったのです。

 

事実は小説よりも奇なり。そんなことがあるんだ、と彼女の話を聞いて鳥肌がたった思い出があります。彼はその後、自殺してしまったと聞いています。

 

彼女はイスラエルで元気に暮らしています。彼女が元気なうちにもう一度会いたいものです。

熱心なパパたち

先日、聞こえない・聞こえにくいお子さん(0歳児)を育てているパパ達が集まりました。皆さん、近年稀に見るすっごく熱心なパパ達で、お子さんが通い始めてから半年ちょっとしか経っていないのに、デフの方達とどうにか手話での会話ができている!すごい!すごい!

 

別の日、パパ達を集めて開いた勉強会での質問コーナーでは、手話通訳を介さずに自ら手話を使って質問をしているパパ達がたくさんいました!すごい!すごい!数年前にはありえなかったこと!

 

手話はことばなので、えいやっ!と覚えようとしない限り覚えられません。お子さんが1歳になるまでにできるだけ習得しておく。手話を覚えておかないと、聞こえない・聞こえにくいお子さんとのコミュニケーションが成立しなくなります。

1歳までは聞こえる子もアーでもなければウーでもない。話しかけてもことばでの返答はないし。聞こえない・聞こえにくい子も同じ。でも違うのは、こちらがことばでのコミュニケーションが成立する前に、彼らのことばである手話を覚えておくということ。

 

ことばを覚えるって、ベースにあるのはやっぱり愛情なのです。例えば、フランス語しか話さない人を好きになってしまったら・・・フランス語を勉強したくなりますよね?

それにコミュニケーションモードは一つでも多い方が便利だし豊かな人生を送れます。それは聞こえる・聞こえないに関係のないこと。

 

そのパパ達。休日に手話を習ったり、勉強会をしたりするためのパパの会を立ち上げました。そのうちこのブログでも紹介いたします。

 

頼もしいパパ達。みんなの宝です!ありがとうございます!

 

うちには2階に猫、1階に犬がいます。猫は犬が大嫌い。犬がバリケンに入ったかな、と2階から様子を伺っている猫。

料理のレシピをこれからも載せて欲しい!との声が寄せられました。これからも時々載せますね。

 

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本当に聞こえないだけ?

新生児スクリーニングで聴覚の障害が直ぐに見つかるようになりました。聴覚障害だけだと思っていたのに、あら?なんかちょっと?この子は本当に聞こえないだけなのか?それとも自閉症スペクトラムがあるのではないか?

 

自閉症スペクトラムかどうかは聞こえに関わらず小さい時に判別するのは難しいです。大抵3歳以上にならないとどんなお子さんでも自閉症とはっきりと診断名がつかないことが多いです。でも、この子には聞こえない障害の他にもしかしたら自閉的な傾向があるのではないか?と心配になったら・・・聴覚障害だけの場合は下記の3つ組の定義が全て当てはまることはありません。

 

英国の児童精神科医ローナ・ウイングは自閉症の3つ組を定義しました。この3つ組の障害に全部当てはまると、自閉症スペクトラムである、ということです。3つ組の1つ目は社会的相互交渉の障害。2つ目はコミュニケーションの障害。3つ目は想像力の障害です。

 

社会的相互交渉の障害とは人との関係を作るのが大変難しいということです。人よりも物への興味の深さ。人への無関心。視線が合い難い。身体に触れられることを嫌う、などが乳幼児期より見られます。

自分と物との関係を作ることは上手なのですが、自分と人との関係を作ることが難しい。赤ちゃんは数ヶ月経つと、おもちゃで遊んでいても、ママに共感の眼差しを送ってきます。そういうことがありません。また、小さい頃は人見知りもなく、おとなしくて育てやすかった、というお子さんも多いです。

 

コミュニケーションの障害とはことばの表出と理解に問題が見られるということです。

 

そして想像力の障害。物を一列に並べたり、同じ行動を繰り返したり、変化が嫌いであったり、特定の物にこだわったりします。小さい子がよく好むごっこ遊びなどは想像力の発達がベースとなっています。見立て遊びっぽいことはなんとなくできます。例えば、食べる真似をする、お茶を注いで相手に渡すなど。でも遊びの本当の意味を理解して友達と遊ぶということができません。

 

また、3つ組の定義の他に、小さいころは、感覚の異常や睡眠障害、多動、極端な偏食も見られることが多いです。

 

以上が自閉症スペクトラムの特徴なのですが、聴覚障害のみの乳幼児のお子さんの場合、上記のような3つ組の障害が全て当てはまることはありません。もし、聞こえないプラス自閉症スペクトラムのお子さんであった場合は、聞こえに対するアプローチだけでなく、自閉症スペクトラムのお子さんへのアプローチも必要になってきます。また、知的な面での発達に大きな遅れと聴覚障害自閉症スペクトラムお子さんの場合は、スペクトラムへのアプローチが大切になってきます。そのアプローチはできるだけ早いうちからが良いです。

 

下の写真は焼きリンゴとバニラアイスのデザート。フライパンに砂糖を敷いてその上に切ったリンゴを敷き詰めて片面5分ずつ焼いただけ。お試しあれ!

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ビーフ・ブルギニオン レシピ

ずっと雨で寒くて、太陽が恋しいです。

いつもお読みくださり有難うございます。

ことばや発達に関するお話を書くことが多いのですが、今日はちょっとブレイク。ビーフ・ブルギニオンのレシピを教えて、とのことでしたので、お伝えしますね!

 

牛のスネ肉を1キロ。お肉はちょっと大きめに切り、小麦粉をまぶします。

鍋にバターをとり、強火でお肉を入れて炒めます。よく焼き色をつけてください。そこに玉ねぎを2個、千切りにして加え炒めます。そこに赤ワインを500ccと水1カップ、塩と胡椒、市販のブーケガルニ、潰したニンニク1片を加えて弱火で2時間。グツグツ煮ます。

2時間経つと、家中が美味しそうな匂いになり、お肉がすっごーく柔らかくなっています。そこにマッシュルームと厚く輪切りにした玉ねぎを2個、加えて20分。

最後に柔らかくしたバター大さじ1と小麦粉大さじ1をフォークで混ぜ合わせ、お鍋の中に加えて混ぜツヤを出します。塩・胡椒で味を整えましょう。

はい!出来上がり。とっても簡単。

 

付け合わせは茹でたジャガイモが本場っぽいのですが、我が家ではジャガイモではなく太いパスタにしています。パセリを散らして ボナペティ!

 

美味しくできたかどうか、お知らせくださいね!

チャーミングなフランスマダム

数日前は暑かったのに、昨日から雨降りで寒くなりましたね。

 

以前、<ビックリ! フランスの子育て>というお話を書きました。そのお話の第二弾でフランスでの出来事。

 

フランスに住んでいた時、年齢を聞かれたことが全くと言っていいほどありませんでした。年齢を意識しないお国なのでしょうね。なので日本に10年ぶりに帰ってきて最初面食らったのは、年齢を聞かれることでした。そうだった、そうだった、日本では直ぐに年齢を聞かれるんだった、と思いました。さて、私は趣味でフランス料理の教室に月1回程度通っていました。その教室でおかしなことがありました。そうそう、そのおかしなことの前に、フランス人ってまな板を使わないで料理をするのです。玉ねぎのみじん切りは器用に手に持って。パセリのみじん切りはコップにパセリを入れてハサミでチョキチョキ。

その料理教室にコックを目指している日本人男性が参加していました。なかなかハンサムな男性で、その料理教室に通っているフランス人熟女達に大モテでした。可笑しかったのは、ある日、料理教室に通っているフランス人のおばあさんが、その日本人の男性に「ねぇ、〇〇(男性の名前)。見てくれる?」と言って、履いてきた赤い網タイツをスカートのすそをチラッとめくり上げ見せてくれたのです。これには教室中で大笑い。冗談ですけれどね。でも何てチャーミングなんだろうと思いました。あとで分かったことですが、そのおばあさんは80を超えていました。すごい!

何歳だからこう、何歳だからこうあるべき、という感覚がない国なのです。

 

そうそう、日本に戻ってきてもう一つ違和感だったのは、「〇〇くんのママ」と言われたことでした。向こうでは名前で呼ばれていたので、最初は慣れなくて、なんか自分がなくなってしまったような感じがしてカルチャーショックでした。さて、犬を飼ってまたまたカルチャーショックだったのは、「〇〇(犬の名前)くんのママ」と呼ばれたことでした!うっそ〜!わたし、犬、産んでない!とビックリ。その話をフランス人の友人に話したら大笑い。でも、今では慣れて、「〇〇(犬の名前)くんのママ」と言われて、「はーい、そうです。」と返事をしている私がいます。アハハ!

 

下の写真は秋になると1度は必ず作るフランス仕込みのビーフブルギニオン。牛肉の赤ワイン煮。フランス人の大好きな牛肉を国の誇りの赤ワインで煮込んだもの。本当はブルゴーニュワインを使うのですが、ブルゴーニュは高すぎて料理には勿体無いので使わず、安いワインで代用。安いワインでも美味しくできますよ。もし、レシピを知りたい方はご連絡くださいね。

 

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