なるほど!おもしろい!
私が担当しているA君。年中さんのときに担当した時は、話しかけられたことばをそっくりそのままオウム返しで繰り返すのみでした。オウム返しになると、親御さんは「オウム返しになってしまって、こちらが聞いたことに答えられない」とちょっと心配になるようですが、悪いことではないのですね。コミュニケーションへの意識が高まってきたことと、ことばがコミュニケーションの役割を果たしているんだって理解し始めてきているということなのです。
「〇〇食べたいの?」と聞くと同じように「〇〇食べたいの?」とイントネーションも同じくオウム返しで繰り返すのみなのですが、その子の本当に言いたいことを一緒に代弁し、ママが一人二役すると良いです。「〇〇食べたいのね。食べようね」など。そのうちに、だんだんと「〇〇食べたいの?」で「食べたい」と言えるようになってきます。
さて、そのA君。年長さんになりコミュニケーションは成立するようになりました。しかも、自分の気持ちや要求も言語化できるようになり、それとともに行動も落ち着き、ママが心配していたのは嘘のようにお兄さんになりました。
ある日、A君と一緒に給食を食べることになりました。その日の給食には食パンが出て、各テーブルにクリームの器があり、そのクリームをぬるようになっていました。クリームを塗ってあげると、なんか不満そう。なるほど、食パンの隅の部分が塗り損なっていたのです。ちゃ〜んときれいに隅々まで塗ってあげると大満足。自分でも塗り直して完璧にしてから食べていました。クリームが美味しかったようで、小さいおかわり用のパンを何度もおかわり。その度にクリームを自分できれいに隅々まで塗っていました。パンのおかわりは3回までとなっているので、もうできない。するとA君「クリーム」と言っています。クリームをもっと食べたいようです。他のお友達は皆、食べ終わっていなくなっていたので、「内緒ね」と言い、器からクリームをすくってA君のお皿の上に置いてあげました。すると、私が考えもしなかったことをし始めました!なんと、お皿にクリームを塗り始めたのです。あぁ!そうかぁ!A君にとってクリームは、食べるものでもあるけれど、塗るものでもあるんだな。クリームを塗るためのパンはなかったので、お皿にのせられたからお皿に塗っちゃったのだな。その様子を見て、もうおかしくて大笑いしてしまいました。
「A君。こうやって食べるんだよ」とお皿のクリームをスプーンですくってあげると、なるほどと思ったようで、それからはお皿のクリームをきれいにスプーンですくって食べていました。
これはこうする(この場合は、クリームは塗る)とインプットされると、律儀にそうしてしまい、こちらが思いもしなかったような反応が返ってくることがあります。本人は至って真面目。小さい頃にいろいろな経験をする、応用できる力をつけるって大事だな、と思います。
A君とは私はすごく仲良しで、言語コミュニケーションが成立しにくかった時から、それでも心はいつもつながっている感覚があり、ふたりでことばにならない冗談を言って(?)顔を見合わせて大笑いしたり楽しい思い出がたくさんあります。
ハート&コミュニケーション 関根久美子
#発達障害 #オウム返し #コミュニケーション #子どもの発達支援
ピタの中にサラダとお肉と、手作りフムスとナスの焼いたものを入れたイスラエル風サンドイッチ。