『ことばの相談室』徒然

ことばやコミュニケーションについて心配や気になること、お子さんに聞こえの問題があり子育てに不安がある、発達全般について心配がある・・・などなど、国家資格を有するカウンセリングサロンです

話しかけの極意

先日、聞こえる発達に問題のないお子さんが、ひとつのことばを理解して言えるようになるまでに、800回聞いている、とお伝えしました。これは聞こえるお子さんの場合ですから、聞こえない・聞こえにくい子の場合には、目を合わせての丁寧な話しかけが最低でも800回ということですね。お子さんに見てもらえるように関わっていく、ということがコツかも。

 

以前、聞こえないお母さんがこんなふうに話していました。

「私たち聞こえない人は、動くものにしか興味がない」

なるほど!と思いました。だから、親御さんのジェスチャーは大げさなくらいがいいし、表情も大げさなくらいがいいし、俳優になったつもりで子どもに対した方がいいくらい。

それから、子どもが理解している、ということが大事。理解していないで表出だけできたとしても、コミュニケーションは成立しないですから。

 

名詞って話しかけるの簡単なんです。例えば、テーブルの上にペンを置いて、「これは ペン。これは ペン。ペン。ペン・・・」な〜んて子どもの気持ちを無視した声かけはやめてもらいたいのですが、名詞ってそれを片付けるまで何度でも繰り返し話しかけられるのです。

でも、難しいのは気持のことばや様子のことばです。子どもがリンゴを食べているときに、「リンゴ 美味しいね。たくさん 食べてるね」などの話しかけができますが、終わったらその話しかけはできません。気持ちのことばはもっとピンポイントで難しい。子どもがブランコに乗っていて、すっごく楽しそうにしていたら、「楽しいね」と伝えられます。子どもは(ふ〜ん。こういう気持ちが 楽しい なんだ〜)って思う体験を最低でも800回。目を合わせて、きちんと伝えることで、理解して、表出に結びつくのです。

それに、子どもの様子をよく見ていないといけない。子どもが突然泣いたとする。その泣いた理由がわからないと、「痛いね〜」なのか「悔しいね」なのか「残念ね」なのか、わからないですから。

 

話しかければいいんでしょ〜、と子どもの気持ちを無視して弾丸トークで話しかけてもダメなのですね。子どもが興味をもったこと、子どもの視線の先にあるものを一緒に見て、子どもの気持ちをくんで、子どもがこちらを向いてくれたときに、目を合わせて話しかける。コミュニケーションですから。心と心の通い合いですから。

南村先生がおっしゃっていたことば「子どもに話す のではなく、 子どもと話す」

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ハート&コミュニケーション 関根久美子(S T)

Kotoba-heart.com